師走の本・壱
「じゃんけんねこ」



「じゃんけんねこ」〜負け話・勝ち話〜
佐藤さとるファンタジー全集10巻より
村上勉(画)

今回も匿名の登場です。


 「じゃんけんねこ」
じゃんけんねこ作戦

おいしいケーキを食べていたのに、落としてしまった。
テレビドラマに見入っているそのときに、停電した。
図書館で借りてきた本の最後のページが破り取られていた。
コピー中に用紙切れになった。

じゃんけんねこ負け話は、そんな感じ。
不思議はチラッと見せるだけ。もっと楽しみたいのにあっさりさよなら。勝っていたらどうなったのかも気になる。
それがこの話のいいところ。

ところで、私は小学校で読み聞かせのボランティアをしている。
佐藤さとる作品を読んだことはまだない。自分の好きな作家を読むのは難しいのだ。今、練っているのが、じゃんけんねこで図書室へ子どもを誘導する作戦。その流れは次のようなものだ。

じゃんけんねこ(負け話)を読み聞かせする。
「勝っていたら、どうなっていたと思う?」
子ども達は、あれこれ考えるだろう。
そこで、じゃんけんねこ(勝ち話)登場。
でも、読まない。本を見せるだけ。
「この本ではたっちゃんはじゃんけんに勝っています」
読んでね、なんていわない。
「図書室にあります」
借りてね、なんていわない。

ちなみに私は図書室整理のボランティアもしている。
作戦の仕上げは図書室。
休み時間に子どもが来る→私に会う→じゃんけんねこを思い出す→じゃんけんねこ(勝ち話)を借りる
ほんの少しだけれど、そんな子は必ずいる。

じゃんけんねこ(負け話)は、子どもの中に住んでいる本の虫をくすぐり起こすことが出来る作品だと思っている。
すばらしい作戦だが、たったひとつ問題がある。
図書室に「じゃんけんねこ」がないのだ。
 



「じゃんけんねこ」〜負け話・勝ち話〜
佐藤さとるファンタジー全集10巻より
村上勉(画)

「じゃんけんねこ」勝ち話は、あかね書房から、いわむらかずおさんの絵で刊行中。
負け話は、ファンタジー全集の10巻か、講談社文庫・「小鬼がくるとき」にあります。

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