師走の本・弐
「人形のすきな男の子」



「人形のすきな男の子」
青い鳥文庫・コロボックル童話集より
村上勉(画)


コロボックル童話集から一編。ちょっと風変わりなお話のご紹介。
竜也は四年生。でも六年生の仲間に二年生から入っている腕白坊主である。ところがこの一週間、こそこそ逃げ回っている。それは・・・。
竜也と、小さな人の人形を巡る小さなお話。
この話、他のコロボックルのお話と違い、コロボックルはおまけ程度しか出てこない。どちらかというと、「わすれんぼの話」や「わんぱく天国」に近い話である。
まんまと友達にイタズラの罠にはめられた竜也。おかげで仲間と大ゲンカになり、みんなと遊べない状態が続く。そんなある日、「おもちゃ屋」にちょっと頭の大きい変わった人形を見つける。
この話には、コロボックルの話はほとんど登場しない。コロボックルは、なんにもしない。最後に感想をちょっと述べるだけである。もっぱら竜也と友達の関係を丁寧に描写したお話といえる。まあ、コロボックルが登場しなくても、そこは佐藤さんの作るお話、ストーリーは展開し、お話は思ってもいない方向に走る。最後には、ほっとさせて終わるのだが、さすがにうまくまとめてくれた上、なにか懐かしさを感じさせる情景を映して見せてくれる。「ああ、こういうことあった、あった」とうなずかせる、その筆運びは感心するばかり。
短いお話ではあるが、読んでも損はない、そんな短篇である。

そうそう、コロボックルファンにはおなじみの、オチャ公が先輩として登場するのも一興である。未読の方は、「コロボックル童話集」を手にとってみてはいかがだろうか?

「人形のすきな男の子」は、青い鳥文庫・コロボックル童話集に収録。

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