弥生の本・弐
「そこなし森の話」



英語文庫版の表紙です。
Never−Ending・・・って、
ちょっと??ですかねぇ。
「はてしない物語」を思い浮かべてしまいます。
(村上勉氏・絵)


そこなし森の話

 ご存じサトルワールドの中にある否含山。そこの麓にあるという「そこなし森」が舞台である。

 踏み込む人もいない「そこなし森」に、年とった六部姿の旅人が迷い込む。ある日のこと、世捨て人のように暮らしていたその老人のまえに、小さくて奇妙な人形の生き物が現れるのだが・・・

 内容を解析すれば、現世(浮き世)から離れて「ある力」を持った六部=老人と、現世(浮き世)の代表=狩人の比較対照ととれないでもない。佐藤さとるさんの「十八番(おはこ)」である「おおきさ」テーマの物語ともいえる。とにもかくにも、 「そこなし森」について物語の中ではあまりふれられない。そのまま通り過ぎて行くだけである。ただし、いろいろな想いを読者に残してくれることは確かだ。都会の中、不夜城と化した生活の場にいながらも感じることができる独特なもの。なにか畏れ多い、神聖な力をもつ「場」の存在。それが「そこなし森」かもしれない。否定できない「精」なるものが、そこには「生きて」いるのだろう。

 とかく、ここ十年ぐらい西洋の借り物的で説明的な「ファンタジーもどき」が多い中、(発表年は古いかもしれないが)日本の伝統的土壌を踏み台にして、芯の部分のしっかりした佐藤さんらしい作品である。

ご存じ、村上勉さんのさし絵版も文句無しだが、別バージョンで中村道雄さんが数十種の木を型ぬき、組み合わせた「組木絵」版も捨てがたい。(偕成社発行) どちらを手に取るかは、「あなた」の感性におまかせしましょう。

「そこなし森の話」 佐藤さとる全集に収録(現在も購入可能)
偕成社では、単独の絵本として中村道雄さんの組木絵が楽しめる。
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