皐月の本・壱:番外編
「佐藤さとる」の本と「読み聞かせ」


「佐藤さとる」の本と「読み聞かせ」

 佐藤さとるさんの本で、「読み聞かせの本」というとなにが浮かぶだろうか? 長さといい、絵柄の具合といい、やはり「大きな木がほしい」が、最初に手に取られるのではないだろうか?次々に登場するアイテムの数々。四季の移り変わり。読み手と聞き手の頭の中には、大きな木が育っていく。
 次といえばちょっと長いが「おばさんの飛行機」になるのだろう。工作好きの子供ならば、おばあさんが飛行機を組み立てて行く様子はたまらないものだと思う。蝶の鱗粉模様の編み込みの羽根を持った飛行機の様子が目に浮かぶ。
 最新作の「行って帰って、星から星へ」も落とせない。ちょっとした仕掛けと、田中清代さんの可愛い絵のコンビネーションは、読み聞かせにはちょうどピッタリ。
 
 『「読み聞かせ」に最適な本は?』という問いは、佐藤さんの本にも投げかけることができる。さだかな事はご本人に聞いたこともないので不明だが、「読み聞かせ」を前提に書かれた本は無いと思う。かく言う私も“「読み聞かせ」は、絵本”と思いこんでいた。
 ところが、「鬼ヶ島通信」の「コロボックル誕生40周年記念特集号」に記載された読者の「思いで」を拝見すると「読んでもらった」方ばかりか、「自分で読んでテープに録音した」という方まで登場された。小学校六年生の時に自分で読んだ私にとって「コロボックル」は、長編であって、決して読み聞かせするような長さの物ではないと思いこんでいた。だから最初にその記事を読んだときは、「まあ、あの長い話を大変だぁ!!」という思いが先だった
 結局の所、子供達にせがまれて「だれも知らない小さな国」を読み始めたときも、「まあ、長続きはしないかなぁ」と思っていたのだが、さにあらんや最初のコロボックルとの出会い以降は、坂道を転がり落ちる石のように加速が付き一気に読み切った感じである。読みながら改めて佐藤さんの描写のすごさを実感した私だった。あの描写力に裏付けされて、所々の村上さんの絵にも助けられて、物語は進んだのだった。
おかげで、今では子供達もすっかり「小山」びいき。とくにエノキノデブ先生のファンになっている。うーーむ。なんという趣味をしているのだろう・・・

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